4.再会のレベランス
こうして久方ぶりの観劇の予定が決まるも、カウフマンはその間も、普段と変わりなく職務をこなし、公演前日の夜には街の郊外に現れた夜鬼を退治していた。出没した位置、大きさや特徴などを記録したのち、聖油をかけて灰になるまで燃やし、危なげなく帰宅。…
ロクスブルギーの棺 小説 舞台編
3.追憶のヴァリアシオン
「――そういうわけで、劇のチケットを貰ったんだ」「ふうん」 再び鉄道を乗り継ぎ、日暮れ過ぎに家に帰ったカウフマンは、食卓で首都での出来事をロクスブルギーに語って聞かせた。吸血鬼はチケットを手に取って、常と変わらない淡白な表情でそれを眺めてい…
ロクスブルギーの棺 小説 舞台編
2.邂逅のアクテュール
各地の支部に駐在している審問官は、定期的に首都の本部に報告書を提出するようになっている。この報告書というのが、率直に言って面倒臭い。支部に提出している日常業務の報告書は非常に簡素なもので、日常生活を圧迫するような手間がかかることはほとんど…
ロクスブルギーの棺 小説 舞台編
1.月下のソリスト
乾杯、という声とともに、ガラスの触れ合う音が慎ましやかに響く。雲ひとつない晴れ渡った夜空の下、広々としたバルコニーに設けられた一席で、紳士と淑女は向かい合って微笑みを交わし、葡萄酒のグラスを傾けた。一口を口に含んで一拍置いたのち、紳士はう…
ロクスブルギーの棺 小説 舞台編