9.後日談
吸血鬼――ほとんど永遠の命を持ち、老いることの無い美しい肉体を持ち、血を糧に生きる化け物。人間と同様に知性を持って言葉を操り、化け物の力で命を蹂躙する、夜の住人。「――知っていると思うけれど、日光だけは部屋に入らないようにしたい」「はいは…
ロクスブルギーの棺 小説 本編
8.その心に報いを
その館は、人里離れた森の中にぽつんと建っていた。その持ち主は、とうに亡くなっている。街から離れているとなると、行き来する間に夜鬼に遭遇する危険が高くなる――そういった理由で、持ち主の子孫は相続したがらず、館は売りに出されることになった。そ…
ロクスブルギーの棺 小説 本編
7.手紙
――懐かしい、夢を見た。あれから二十年ほども経っているのに、未だにあの日のことを、これほど鮮明に思い出せることが、少々気持ち悪いと思って苦笑いが浮かんだ。どれほど未練がましく思えばこうなるのか。男は起き上がって、鏡に自分の姿を映す。軽く首…
ロクスブルギーの棺 小説 本編
6.去りし夜
――ゆったりとした揺れで、目を覚ます。温度の無い背に負われて運ばれているようだった。それを認識したのとほぼ同時に、ロクスブルギーが肩越しに少し振り向いた。「起きたかい。じきに人の住んでるあたりに出るだろうから、もう少し我慢してくれ」「ん……
ロクスブルギーの棺 小説 本編
5.茨の君
「……甘い」 薄く熱の無い唇が、そう呟いた。血の様に赤い瞳が、ゆっくりと揺れる。吸血鬼――ロクスブルギーは周囲の様子を確認して、その棺から半身を起こす。本当に、起きた。こんな時でなければ、どれほど嬉しかったことだろう。零れてくる涙が、感極ま…
ロクスブルギーの棺 小説 本編
4.その瞼が開くとき
その中に本当に吸血鬼がいると知ってからは、度々真夜中にその部屋を訪れて、棺に語りかけていた。寂しかったからだ。子供っぽいと言われればそれまでだが、子供だったのだから仕方ない。どれだけ声をかけても返事が返ってくることはなかったが、何も変わら…
ロクスブルギーの棺 小説 本編
3.隠者の告白
その老人は、人目を憚りながら生活をしていた。代々築いてきた名声は朽ち果て、資産であった骨董や宝飾も、多くを手放すこととなってしまった。片田舎の小さな小屋で、残っている僅かな宝物を手慰みのように愛でながら、時折骨董仲間との文通や取引をして過…
ロクスブルギーの棺 小説 本編
2.かつてその中には
――『ロクスブルギーの棺』は、それなりの期間、家に保管されていた。母が死んでからというもの、父は奇妙な宝物などを集めて仲間うちで自慢し合うのが趣味だったので、その棺もそういった理由で手に入れたものらしかった。しかし、その棺は宝物を飾る部屋…
ロクスブルギーの棺 小説 本編
1.棺
かつてその中には吸血鬼がいた―― 骨董屋に並ぶその美しい――と表現するのが適当かはさておいて――棺には、そのような曰くがあった。 『吸血鬼ドラクル』は、『夜鬼ナイトゴーント』と総称される、化け物の一種である。最大の特徴は、人間の血を糧とす…
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