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『ロクスブルギーの棺』編集後記

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https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=...

『ロクスブルギーの棺』、無事に加筆修正が完了し、これにて完結となりました!
めでたしめでたし。大変めでたいことです。
これまで「長編として構想している物語のうちの一編」は書き上げたことがありましたが、「ひとつで完結する短編」というものを書いたことはほとんどありません。そういった意味でも、とても達成感のある作品となりました。


執筆のきっかけは、ちょうど吸血鬼が出てくるTRPGシナリオをGMとして回させて頂いたことです。
吸血鬼というモチーフ自体は大好きでしたのでシナリオもとても楽しく遊ぶことができ、吸血鬼の物語を自分も書いてみたいな、と思い着手しました。
いくつか物語の案はあって、「気弱な聖職者と吸血鬼のバディもの(?)」みたいなものもあったのですが、最終的に「吸血鬼を追いかけ続ける人間の物語」という今の形に落ち着きました。もっと文字数と時間をかけて、吸血鬼の棺が辿ってきた道のりとか、棺のために人生変わってしまった人とかを出しても面白かったかもしれませんが、最終的にロクスブルギーとカウフマンの再会というところに見せ場を持っていこうと思ったので、ばっさりカットしました。棺で一番人生が変わってしまったのは間違いなくカウフマンでしょうし、棺の背景的にもあまり多くの人がそれのことを知っているのも不自然だったので……。

そんな書き手の都合は置いておいて、物語のひとびとを少し振り返ってみようと思います。

■ロクスブルギーについて
タイトルにもなっている棺の主であり吸血鬼。ロマンに溢れる設定をたくさん盛り込んでも許される、吸血鬼というモチーフに大感謝。不老不死の美しい容姿と、人知を超えた能力を兼ね備えた夜の住人です。

名前の由来は「ロサ・ロクスブルギー」という薔薇から。
和名では「十六夜(いざよい)薔薇」といって、十五夜の満月を過ぎて少し欠けた月のように、花の一方が必ず欠けているところからそのように名付けられたそうです。なんて詩的な名前なんでしょう。あまりにもその由来が美しかったので採用しました。また、「チェスナット(栗)・ローズ」という名前もあり、蕾はトゲで覆われていて栗のよう。「茨の君」というか「棘の君」かもしれない。

彼は人間に対して複雑な思いがあります。本人の言う通り「好きじゃない」存在であり、しかし「嫌いではない」のです。それは彼がこれまで、比較的人間と交流を持ってきたからこそ出てくる感想でしょう。
彼が棺を大切にするのも、棺ごと人の世を流離うことになったのも、人間が関わっているからです。
そのうちには詳しい話をしてくれるでしょう。きっと私が死ぬまでには……。

ロクスブルギーは自分が化け物であることを強く自覚していますが、情緒の面で吸血鬼と人間の間にそれほど差は無いと考えています。それは自身に、孤独や寂しさを感じる瞬間があることを知っているからです。どれだけ長生きしてみても、不意に襲い来るその感覚から脱せないことが、彼を悩ませています。棺の中で眠ることにしたのは、その苦悩と直面するのを避けるためでもあったかもしれません。

そんな彼にとって、ルーは特別な人間のひとりなのでしょう。その先の別れを一層辛くすることになると知っていても、彼の二十年に報いようとロクスブルギーが決めたのには、やはり幼き日のルー坊やの行いがあったからかもしれません。実際のところ、棺で眠っている間どれくらい話を聞いていたかは定かではありませんが、もしかしたら結構聞こえていたのかも。恥ずかしい口説き文句とかをね……。
ルーとの別れは避けられないものになるでしょうが、それでも彼はひととき、永きに渡る孤独を癒す場所を見つけることができたのです。めでたし、めでたし。やはりその言葉で締めくくるのが相応しいでしょう。

■ルーについて
吸血鬼に出会って人生が歪んでしまった可哀そうな(?)人間です。
幼い頃は背の順で前の方になる小さな子だったけど、大人になるまでにめちゃくちゃでかくなったタイプの男です。これにはさすがのロクスブルギーもびっくりしたと思います。子供から大人になった同一人物を見たことはあまりなかったかもしれない。

ルーの家庭環境などもあまり詳しく書く隙間がなかったですが、カウフマン家は商売でそこそこ儲けていた、一代で財を築いていたタイプのお家かなと思います。悪く言うと成金な家庭でしたが、それでも礼儀作法なんかの躾はされていただろうと思うので、必要があれば意外にも美しい振る舞いを見せてくれるのかも。
しかし、ルーの母親が死んでから、父親はだんだん怪しいカルトのようなものにのめり込みはじめ、夜鬼に纏わる怪しい古物などを集めるようになります。元々商売のツテは多く持っていたので、「ロクスブルギーの棺」もそうしたツテから手に入れたものなのでしょう。

名前の由来は正直あんまりこれという強い理由はないです。吸血鬼ときたら人狼か!(?)というよく分からない連想からループス(狼)を入れ、でかい男が可愛い名前で呼ばれていたらかわいいな~という欲望があったくらいです。そんな由来がありますが、この世界では人狼は絶滅しているので、特にルーと人狼には関係はありません。ルー・ルプスちゃんとも無関係です。
本当はロクスブルギーに合わせて花の名前にしたかったんですが、いい感じに思いつきませんでした。
結果、ルピナスという花の語源がループスにあるということを知り、そこで妥協しました。
いろいろ説はあるみたいですが、この花の生命力の強さを狼に喩えてつけられたそうです。花言葉は「貪欲」。

ルーはロクスブルギーを友人と呼んでいますが、そこに内包されているのは単純な友情だけではないのだと思います。家族に対するような愛情、上位存在に対する憧憬と信奉、恋愛対象に対する恋慕や情欲……など、幼少期に出会ったひとりの存在にそれだけ多くの感情リソースを向けることになってしまっては、人生が歪むのも止む無しかもしれない。これまでお付き合いしていい感じになった女性もいたでしょうが、おそらく長続きすることはなかったと思われます。ルーにとって、ロクスブルギーより強く想える人は、おそらく現れることは無いでしょう……。

作中では意識して、ルーがロクスブルギーの性別について言及するシーンを入れないようにしています。世界観の設定的にはおそらく同性愛は褒められたものではないのだと思いますが、ロクスブルギーの性別がどうであっても、ルーのやることは変わらないためです。綺麗なものは綺麗だし、好きなものは好き。それが社会的にどうであるかという点を度外視する我の強い点は、確かに父親譲りなのかも。

ロクスブルギーが二十年に報いる形で傍にいてくれることになったことで、ルーの物語は美しい完結をしましたが、教会の人間として夜鬼と対峙する、あるいはロクスブルギーとの交流の中で変化する関係性など、彼の物語はいろいろと考える余地があるなと思います(今のところ3パターンくらい考えています)。
またお目にかかることがあれば、彼の危なっかしい人生を見守って頂ければ幸いです。

■作業用BGM
加筆修正作業にあたっては、いろはエディタ(https://proto-iroha.underxheaven.com)を利用させて頂きました。
音楽と背景画像を設定して文章を書けるオンラインのエディターです。
雰囲気の盛り上がるBGMがたくさんありましたので、いくつかお得にお気に入りのBGMを紹介します。

・人狼の為の子守唄 / しゃろう
回想シーンはじめ、多くのシーンでこちらを流していました。
優しくて少し寂し気なメロディは、遠い日の朧げな思い出を追いかけるルーの心情にあっている気がしました。

・月下美人 / まんぼう二等兵
ロクスブルギーが起きてから戦闘までのシーンは主にこれを流していました。
タイトルがもうそうだから(?)。戦闘シーンはやや加筆が多かった部分ですが、楽しくかけた気がします。
調子に乗りすぎるとバトルものになってしまうのが悩みどころです。

・ワスレナグサ / まんぼう二等兵
ふたりが再会するシーンはこちら。とてもエモーショナルな盛り上がりのあるBGMです。
終盤はかなり加筆したので、だいぶTwitter版と異なる雰囲気になってます。
ワスレナグサの花言葉は「私を忘れないで」です。これだけ覚えてブラウザバックしてください(?)。

・Horizon Blue / Ryo Lion
オマケ書いてる間は大体これ。可愛らしく明るいトーンが日常シーンにぴったり。
願わくば一分一秒でも長く、彼らのこれからの日常がこうありますように。畳む


ここまでお目通し頂きまして、ありがとうございます。
また別の機会にお目にかかれましたら幸いです。

#ロクスブルギーの棺

2023年7月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

「妖精令嬢と識欲魔人」第25話「青い瞳のゲシュペンスト」

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カクヨム にて更新されています。
近況ノートも更新されていますよ!よ!
ぜひ読んでくださいね~

グリューネちゃんの頭の花が新バージョンになるのでメインビジュアルも新バージョンがいるな……。

#妖精令嬢と識欲魔人
「アイムホーム」第四話:君にかけた呪い

更新されました。ちゃんとしたBL回。

前回は「関係を壊したくないので想いは伝えない」思想のいじらしい乙女の話だったのですが、今回は「全てをぶち壊してでもお前を手に入れる」思想の男こと依藤の登場回でした。まだあんまり壊してはない。これからですね。
優しい言葉を囁く裏でドロドロしたものを抱えている人間は良いなと思います。

佐伯千歳、鈍感系主人公なのかもしれない。いや? お前はヒロインなんだが……

#アイムホーム
「マーダーとテーラー」第一話:猟犬と天使、第二話:寒空と少年

更新されました。古い作品です。めちゃくちゃ気に入っているので何回でも掲載します。
BLっぽいようなそうでないような微妙な温度感です。
愛には違いないが恋ではない、そういう感情を「親愛」と呼びたい今日この頃。

一応完結までのぼんやりとした話は考えてあるのですが、今連載している「妖精令嬢」が完結するまでは続きは手を出さないようにしています……と言いつつそのうちちょこちょこ進めるかもしれないです。

どうぞ、凍える彼らの手を握るつもりで読んで頂ければと思います。

#マーダーとテーラー

2023年6月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

「アイムホーム」第三話:ボーイミーツガールは始まらない

更新されました。BL小説なのにBLしてないという大いなる矛盾。
でもボーイミーツガールは始まらないのです。この話は信仰と劣情を抱える男たちの話だから……。

ばっちゃに続いて二人目の女性キャラクター・冬野さんの回。
「僕の方が先に好きだったのに」に対抗して、「出会ったのが遅かったから何も始まらなかった」話です。
異性間の友情にはやや懐疑的だったのですが、同性が恋愛をするのだから異性でも親友になり得るのだろうと最近は思っています。

果たして燦くんは冬野さんに友情をプレゼントしてもらえるのか?
運命の誕生日会(回)は次の次くらいです。え?次じゃないの?

長く続くと苦しいからさっくり完結してほしいと思っている、そんな拙者です。


#アイムホーム
『アイムホーム』人物紹介

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アイムホーム
日渡 燦 (ひわたり あきら)

主役そのいち。もうすぐ二十歳になる。
家庭内暴力によって一家が離散、祖父母の家で育てられる。幼少期はあまり笑わない子供だった。
高校を卒業してからは佐伯千歳の自宅の一室を間借りして生活している。

恩人であり幼馴染であり同居人である千歳を神様のように信仰しているが、ある時期を境に恋愛対象として意識する。
冗談めかして千歳にキスをせがんだりするが、実は全然冗談ではないし、それ以上のこともしたいという欲求がある。
それほど千歳に強く執着している一方、ごく普通に幸せになってほしいとも考えており、何年も内心をひた隠しにしている。

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アイムホーム
佐伯 千歳 (さえき ちとせ)

主役そのに。二十八歳。
裕福だが常識の破綻した家庭で育ち、家族をひどく嫌っている。
父親の反対を押し切って美大に進学を決めたため、家族とは現在絶縁状態になっている。

暴力を振るわれていた燦を助け、それをきっかけに懐かれるようになる。
燦を本当の弟のように大切にしているが、あるときから劣情を抱くようになってしまい、自身に深く絶望している。
このまま燦に依存しては、また燦を自分に依存させてはいけないと言い聞かせて、どうにか離れようと四苦八苦している。

#アイムホーム

なんやかんやあってサイトを移転しました(早)。
理由はいくつかあるのですが、主に創作サイトに特化したWitchServerさんへ移りたかったというのがひとつ。
もうひとつが前のドメイン名が微妙だったからです(事業のために取得したものだったので……)。

良いですね、WitchServerさん。ちょうど魔法使いの話も書いていることですし親近感があります(?)
月額も手ごろですし、wordpressとてがろぐ(この簡易ブログシステム)のクイックインストールもある。すごい。
創作サイト(一次二次問わず)を令和の世に作りたいという人のニーズになかなか適っていると思います。ぜひ。

サイト名の「Grun」は「ぐるん」と読むのですが、ドイツ語の「Grün(グリューン)」も意識しています。
何故かって緑色が好きだからです。連載小説のヒロインもグリューネなのでちょうどいいですね。

今後はカクヨムに掲載している作品+未完の半端なやつを格納し、二次創作を一部載せていきたいと思います。
どうぞよしなに。

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