アイムホーム
1.君はまるで神様で、
無機質なアラームの音が、意識の遠くで聞こえる。枕元に置いたスマートホンを弄る手つきは慣れたもので、ものの数秒でアラームを停止させる。嫌だ。まだ寝ていたい。だってまだバイトの時間までは余裕があるし、そのバイト先まではバイクを飛ばしてたったの…
2.幸せは決して歩いて来ないから
絵を描くという行為は、それをしない人が想像するよりも遥かに、心身を削る行為だ。それ故に、ひと仕事終えた時の解放感は計り知れない。出展する予定の絵を描き終えたので、久しぶりに今日は休日らしい休日を送っている。 同居人がバイトに出かけていくの…
3.ボーイミーツガールは始まらない
『フェリーチェ』は、繁華街から少し離れた場所にある、隠れ家的イタリアンレストランだ。各地の名店を渡り歩いて修行したオーナーが開いた小さな店である。素材にこだわり抜いた料理と、非日常を演出するアンティーク調のインテリアが注目を集め、近隣では…
4.君にかけた呪い
身支度を整え、陽が傾いた頃に家を出た。 電車内は帰宅する学生たちで賑わっていて、どことなく懐かしいような気持ちになる。 高校までの学生生活は、特段充実したものではなかった。放課後に、制服を着たまま日渡家へ立ち寄っては、燦と一緒に過ごした日…